2008年11月7日金曜日


そこの柱と壁は簡単に外れるように作ってある。外したらトイレまで段差なく行ける。あとはここに手すりを付けて…と本人が大工さんに指図して住宅改修の打ち合わせをしてから二日後、その人は亡くなった。建築会社を退職後自分で場所を選んで、自分で建てた家。
 初めて会った病室で、奥さんの話を聞いてから「頑固そうですね」と言ったら、横にいた娘が「そうじゃなく、頑固です」と言いったのを、笑って聞いていた。ガンの末期で医者は自宅で過ごす時間を大切にしたいと言う。本人もガンのことは知っていたが、自宅に帰るこことが楽しそうだった。「自分で建てた家に帰りたい」と言う。娘は自宅に帰ったら母親が苦労することがわかっているから、退院にあまり賛成はしていない様子だった。
 夜半に、何か変だと本人が言い始め、妻は病院に電話したがしばらく様子を見たいと医師が返事をした。妻が座って後ろから抱きかかえて、今までの生活を色々話した。夜が明け始めて病院に連れて行くための準備をして夫の元に帰ったら、息をしなくなっていた。
 出勤してすぐに電話を受けて飛んで行った。娘たちは病院がすぐに受け入れてくれなかったと、不満げだった。妻は、なぜあのときに入院の準備をして離れたのだろうと少し悔やんでいた。医師は、電話が会った時にすぐに行くべきだったのかと悩んでいた。私は、不謹慎かもと思いながら、枕元でこんな亡くなり方をしたいと話した。
 1週間後、自宅を訪ねた。妻はこの家は1人でも住みやすいという。台所に立つと手の届く所に棚や引き出しが作ってある。床下の収納も便利だ。頑固なご主人だったけど、妻への思いやりのこもった家を建てて残してくれている。その心配りが残された人の生活を支えているのだと思った。

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