2008年11月10日月曜日

沈黙

Nさんに会いに行った。とても理論整然とお話なさるが、時々 細かい内容に矛盾がある。脳転移が生じている。ご自分でもそれに気がついていて「早く帰らないと 家の中のことを忘れてしまう」と言う。
もう最後になるだろう、と この初夏に旅行をされたそうだ。温泉に行き、広い露天風呂で子供みたいに泳いでみたが、泳ぎは得意だったのに全然浮かなくてびっくりしたと言っていた。体脂肪が落ちたからなんだろう・・。こんなに痩せたんだな、と思ったよ、と言うので、Nさん その前に露天風呂は泳いじゃいけないのよ、と私が言うと 笑っていた。
僕はもうすぐ死ぬから あんまり家の中を大袈裟にしないでいいよ、あとから手摺りとかが邪魔になって家族に迷惑をかけるから、と言う。奥様は とにかくNさんが家に帰ってから安全で快適に過ごせるような環境をと希望されている、と伝えると どうせ死ぬのに・・と言う。
何かを答えなくてはいけないと焦ってはダメだと分かっているのに・・沈黙を恐れてはいけないのも分かっているのに・・俯いて焦ってしまう情けない自分がいる。
私の家族に もし何かあった時、それで安全を確保できるなら何十本でも手摺りをつける。それで一回でも多く笑顔が見れるならどんなことでもしたいと思う。生きてさえいてくれたらいい、と思うだろう。

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