アルツハイマーと診断を受けた時、彼女はまだ60代だった。昔から穏やかでおとなしい性格は今も変わらない。さっき話したコトも忘れてしまう。簡単な質問に対しての応答もちくはぐだ。言葉がなかなか出てこない、手にした物の用途が分からない。でも常にニコニコ笑っている。隣に座ったご主人がぽつんと言った。これから老後を二人でのんびり、と思った矢先のことだった。がむしゃらに仕事して家族を養って来た。自分が70になった時、妻の介護が始まった。
このご夫婦は お二人とも私の両親と同じ歳だ。72歳と70歳。どうしても自分の両親と重ねてしまう。
だけどね、妻は昔から私に口応え一つしない女性でしたよ。認知症になっても私に口応えしないんですよ。それが可哀相でね。これが僕の人生の集大成なんですかね・・。
隣で座っている彼女は夫が自分のことを話していることを理解できない。何か話しているのだと思って ちくはぐな相槌を打ちながら、ただニコニコ笑っていた。
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