認知症のある女性。近くに息子が住んでいるが、余り関わりを持たず一人暮らしをしている。今から行きますから玄関を空けていて下さいねと電話を掛けていても、10分後には忘れている。
こっちの顔も覚えられていないから、毎回何の用事で来なさったと不審者扱いをされる。「この辺に田中さんって家がないですか」と尋ねると喜んで家に上げて、お茶を出してくれるが、台所に行ったところで何しに言ったのか忘れたのか、カビの生えたお菓子を持ってきてしきりと勧める。聞くと、役場に勤めていて女性として初めて課長になったと言う。だから町内の人の名前はみんな覚えていた。
デイサービスセンターから、欠席が多いと聞いていたので何で休むのか尋ねても、私はそんな所には行っていないと素っ気ない。
女性の管理職と言えば、頭が良くてブライドが高いから知り合いに会うのが嫌なのかと思っていたら、意外なことを話し始めた。昔、国民年金が始まったときに年金の係をしていた。強制加入じゃなかったから、加入を勧めないといけないんだけど、この辺は農家が多いでしょう。現金収入が少ないし、もらえる年金は1万円ぐらいだという話だから加入する人が少なくてね、結局、いま年金をもらえない人が多くいる。もらっても3万円ぐらいなのに、自分は20万円以上年金をもらっているのが、みんなに申し訳ない。何であのときに強く勧めなかったんだろうなと後悔している。
そんな事こそ忘れたらいいのにね。

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