2009年12月5日土曜日

「ほら、見てやって下さい。先日、美容院に連れて行ってやってね、カットしたんですよ。ほらね。」その言葉に応えるようにアルツハイマーの妻は髪に手をやった。
「あら、ほんと。よくお似合いですよ。5歳は若返りましたね。」
初めてお逢いしたのは今年の3月中旬だった。住み慣れた街から息子夫婦宅に身を寄せることになったばかりの頃の彼女は、見知らぬ土地で介護に疲れた夫の声に怯えているように見えた。何も伝わらない、何度言っても分からない...夫は悔しそうに呟いていた。
あれから8か月弱、夫は同じ台詞を言う。「妻には何を言っても伝わらないし、何度言っても分からないんでね」でも何かを乗り越えた表情で...。
奥様には ご主人の愛情がちゃんと伝わっていますよ、そんじょそこらの夫婦より ずっと気持ちが繋がってるじゃん。手を繋いでマンションのエレベーターに乗り込む二人を見て そう思った。

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