2010年2月20日土曜日

儲け

身寄りがない人には、最後はどうして欲しいか尋ねることにしている。
男性が栄養失調で入院したときファイルを見ると結婚していない。兄はいるが疎遠だと書いてある。

どうする。お兄さんを捜そうかと尋ねると、向こうも迷惑だろうから探さなくていいと答えて黙ってしまった。そのほかに誰もいないのと尋ねると、しばらくして身の上を語り始めた。

二十歳の頃に片思いの人がいたが言い出せなかった。一緒に仕事をしていて仲が良かった。何年か経って忘年会でその人が先輩と結婚することを聞いて、その夜はやけ酒になり途中から意識が無いが、翌朝彼女が介抱してくれていた。彼女はしばらくして県外に嫁いで行いった。

25歳の時かな、彼女の新居に訪ねていった。その時先輩は出張でいなくて不倫関係になった。それっきり会ってはいないのだが、年賀状は時々来る。彼女の娘の名前が自分の名前と同じで、最後に会ったときにできた子だとすると計算が合うんだよな。でも怖くて聞くことができないまま、40年が経ってしまった。

今の姿からはとても想像つかないロマンチックな話をする。

だから、結婚しなかったんだと、冷やかすと、もてなかっただけだよと答えた。長話で呼吸が苦しくなったようなので病室を辞した。
子供ができることを「子供を儲ける」と書く。「授かる」の方が好きだが、文学的でケース記録にはふさわしくないのだろう。彼が子供を儲けていたのか分からない。

0 件のコメント: