それから一月。本人と職員の表情が硬い。
入所した次の日、一人で外出しようとして職員から止められたらしい。
そういえば、入院中ようやく立てるようになったら、玄関前のタクシーに乗ってお菓子を買いに出かけて婦長から苦情の電話が来たことがあった。
自由気ままに暮らしてきた人は手ごわい。
春が来ても、バイク通勤はまだ寒い。梅や桜の花と一緒に花や新芽の香りが気持ちがいい。マナーの悪いドライバーと、くしゃみの原因の花粉が無ければもっと楽しく通勤できるのに。暖かくなってミニスカートが増えると、脇見運転が増えて…と言うことはないが。
季節の変わり目のせいかおかしなお客さんが増える。大声で職員に文句を言っているのだが、結局はマヨネーズを買おうとして財布のお金が足りなかったということらしい。それが、市長を呼べ!政治が悪い!となると、下を向いて笑いをこらえるのに苦労する。
認知症の周辺症状も悪化するらしい。しばらく様子を見ていると落ちつきますよと、根拠のない説明を家族にすると、いつの間にか家族からの訴えは無くなる。単に、家族が慌てなくなっただけで、プラシーボ(偽薬)効果だと思う。
「季節の変わり目」はお天道様に責任を転嫁する言葉かもしれない。
山の中で暮らしている老夫婦。夫は庭までしか出られないが家事は全部している。妻は急な斜面を登って行けるが認知症のため家事はできなくなっている。二人で山の間の畑を作ってきた。だから近くに引っ越してきた人は自分たちの生活に進入してきたとしか思えないのだろうか、深夜に塀を越えて文句を言いに来る。自分がかわいがっていた猫をいじめた。畑のものを盗っていった。…苦情を聞かされることになった新人さんは安眠できなくなった。
物盗られ妄想などの被害妄想のある人の援助は難しい。全く自宅に入れてくれない人の方が解決策がある。援助する人が加害者にされるから、手伝う人が減ってくる。
結局、この人が施設や病院に入って地域からいなくなるか、頭か体が弱って動けなくなるのを待つしか無くなる。いい医者がいたら、妄想を軽減させる薬を処方してくれるかもしれないが、被害妄想のある人は薬を飲みたがらないから、家族がうまくしないと家族が加害者にされてしまう。
相談を受けても、解決策が浮かばずに困ってしまう。
花見と桜は我が家の行事。どちらも短い期間しか楽しめないが、それよりお金がかからない。梶井基次郎は、桜の樹の下には屍体が埋まっていると書いたが、そう思わせる美しさがある。満開の桜の花びらは、引っ張ってもなかなか取れないのに、満開を過ぎると風で吹き飛んでしまう。虫を呼んで受精するまでのはかない命だと考えると、桜の樹の下にあるのは世代交代を終えた人なのだろうか。
一斉に咲いている桜でなく、山の中で一本だけ咲いている樹を探したが、携帯のカメラでは限界があった。
4月4日は、3月3日と5月5日の間で「おかまの日」と新郎の挨拶の中で言ったせいか、意外と結婚記念日を覚えてくれている人が多かった。同時に、結婚式で酔っぱらった新郎の姿も思い出されるのだろう想像すると恥ずかしくなる日。
まずはやってみよう。一つずつo(^-^)o