
やっと入所できるようになりましたと奥さんが報告に来た。夫は認知症で、夜中一時間おきに失禁して目を覚まし家から出て行く。5階の階段を下りてパジャマのまま歩く夫の後を静かについて歩き、夫が疲れたところで声を掛けて家に連れ帰る日が続いていた。デイサービスを利用しても帰りたがるから妻も一緒に行く。ショートステイは昼前に家を出て翌日3時には帰るから洗濯しかできなかった。今年になってようやく限度額一杯のショートステイが使えるようになったが、自宅まで昇る筋力がなくなっていたから、仕方なく入所することになった。
特養の相談員から、このまま入所で良いですかと聞かれて、「入所させて欲しいのと連れて帰りたい気持ちが半々です」と答えたという。親戚からは、せっかく入所できるんだからそんなことを言ったらだめと叱られた。子供が親を入所させるとほっとするという人がいるけど、子供は薄情なんでしょうか。夫が居ないと、昼は用事で気が紛れるんだけど夜が寂しくて仕方ないという。 子供たちは自分の家庭や生活があるから、親の世話で壊したくないんでしょうね、と答えた。施設に入所させたから介護したくない訳じゃないし、薄情だとは言えないですよと答える。
夫が認知症になるまでは一緒に理髪店を営んでいたことを思い出した。結婚してから現在までずっと二人だけで一緒に生活してきたからだろうか。
夫が定年で家に居る時間が増えると妻からウザイと思われる夫婦がほとんどで、熟年離婚が増えていることを考えると、この夫婦の生活は貧しかったけど絆は強いのだろうなと思う。
会いに行きたいんだけどお金がかかるからあまり行けないと寂しそうな奥さんに、ご主人が入所する施設のデイサービスを利用するようにしたらいいですよ助言ともつかないことをいうと、そうですねと明るい表情になって帰ったのが救いだった。
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