マジシャンだった彼は 思わぬ火事で逝ってしまった。
代行申請したので、おそらく要支援1の認定が下りたであろう頃に 2,3度 電話してみたが、ちょうど留守ばかりで話しをしないままだった。
彼が逝ったのは3月にしては ひどく冷え込んだ夜だった。ストーブを強めの火力にしていたのだろうか。タバコの不始末だったのだろうか。新聞には一酸化炭素中毒と載っていただけで、なぜ火事になったか記事だけでは分からなかった。
認定調査員に「しっかりなさっているようでも 狭い部屋に本がぎっしり、ベッドの近くにストーブがあり火事が心配だ」と言っておいて、電話が繋がらなかったなら なぜ事務所から数十メートルの彼の家を訪問しなかったのか。彼に会ったとき「ストーブを違う場所に移動したほうがいいよ」と言ったくせに。
「近所に迷惑をかける死に方はしたくない」と言った彼。「何年も会ってない娘がいる」と言った彼。目の前に炎が上がったとき、どんなに怖かっただろう..。
「何十年も独りでこうやって来たのに大丈夫だよ」とストーブを見ながら笑った彼が 認定申請を思いつくこと自体がSOSのサインだったのに。

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