ひところ「○○の品格」という題の本が流行った。著者にその品格が備わっているのか、会って話したことがないので何とも言えないが、自分だけは違うと、上から目線を感じた。
介護保険が始まってからの変化の一つに、自宅での介護者が介護の苦労を口に出し始めたことだと思う。今でも介護者の大半は女性で、それも嫁と娘が担っている。以前だったら、長男の嫁が「お義母さんが呆けたので、どこか施設に入れたい」というものなら、親戚縁者はもちろん近所の人たちからも非難を浴びたものだった。だから、自宅で介護している嫁や娘は介護の苦労を口に出せず、ひたすらイエの善き女の役割を担っていたものだった。そんな話を講習会の場でしても頷くのは50代以上の女性に限られる。介護保険は、家庭介護者の苦労を解放するために作られたのだから、どうして施設入所の話をしてはいけないのだと怪訝な表情をされることが多い。
そうなのだが、家族で介護している人が介護の苦労を語るときの話し方が気になるのだ。自分一人が介護を担うことはない。要介護者の言動がいかに自分の負担になっているのか。自分はその介護の苦労を話す権利がある、という態度が見え隠れするのが私は嫌なのだ。その言葉や表情の中に、介護している人の人間性が見えてくる。
パソコンのデータを整理していて、息子が撮った父の後ろ姿を見つけた。自宅にくる看護師や理学療法士を迎えるために、ひげを剃り着替えをしていた。父を介護していたわけではないが、多くの事を学んだ。実験台になってくれたと思っている。介護保険は介護者の介護の苦労を解放しようとしている。しかし、同時に介護を受ける人の思いを尊重しなければいけないのだと、改めて思う。
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