彼女とのお付き合いも一年近くになるが、なかなか打ち解けて話せなかった。
とてもおとなしい人で、自分から話すことはない。
彼女が・・と言うより、彼女の家を訪問することが苦手だった。
今日は庭の紫陽花がきれいだったから、まずは話しかける言葉が見つかって助かった。 「紫陽花がきれいに咲いたね」とベッドに寝たままの彼女に言うと、にっこりした。「ちょっと外に出てみようか、風に当たってみる?」と言うと、えっ?と言う顔をする。 行かないと言うだろうと思っていたから私も驚いた。そして思い切って言ってみた。 「一緒に散歩に行こうよ」
彼女はいきなり起き上がった。しかもサイドレールに掴まりもせずに・・。
車椅子に乗せて近所の神社まで行く。30㌔余りの細い彼女でも、神社までの坂は結構 力が要るものだ。
「・・しんどいやろう?」と彼女が言った。 「大丈夫よ、もう少し太ってもいいよ」と言うと、「私があまり喋らないから しんどいやろう?」と言う。 彼女はわかっていたんだな、と申し訳なくなった。
それから色んな話をした。 彼女が今一番したいことは、自分の部屋の掃除だそうだ。夫に任せているから、文句は言えないから我慢しているけど、やり方が気に入らないらしい。 「ウチもそうだよ」と二人で大声で笑った。 何にも言わない人だから、何にも思わないわけではない。 認知症自立度はⅣがついていたけれど、胸の奥にしまっている思いはたくさんあるんだな。
さて、次回の訪問が楽しみになった。

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