早朝というより未明、Fさんから電話がかかってきたのは、先々週のこと。起き上がれない。何もできないので病院に連れて行って欲しいと弱々しい声で訴える。訪問すると、トイレに行こうとして転倒し、左の腰が痛いという。その割には左を下にして寝ているのが気になるが、転倒と聞いて大腿骨頸部骨折を疑うのは常道。そんなこともあるかなと思いながら救急車を呼んだ。
以前から、靴下のままでは歩きたくないぐらいに汚れた部屋だったのに、布団は便と尿の失禁でしっとりとした上にひどく臭う。トイレまでの床には尿の水たまりができて、それを下着で拭いて丸めて置いてある。枕元には、食べかけのご飯や缶詰などが散乱している。駆けつけてくれた救急隊員もつま先立ちで移動している。とりあえず、入院のために下着やタオルを袋に詰め、紙おむつとティッシュを抱えて救急車に乗せる。運良くかかりつけの医院に外科医が来る日だったので救急車は古い医院に搬送してくれた。胸椎の第12番目が圧迫骨折しているとの診断を受けてから、お世辞にもスマートとは言えないFさんは担架に乗せられ、階段を上がって病室に運ばれた。同僚を呼んで部屋の大掃除と、洗濯を汗だくでして事務所に帰った。
翌週、医院の看護師から、こちらの指示に従わないし廊下は歩いているので退院させますと電話があった。栄養剤を水代わりに飲んで、腰が痛いから痛み止めを欲しいとひっきりなしに訴えたりすることでもてあましたらしい。本人は、ここの看護師は親切じゃないから、以前検査入院した病院に移るのだと言う。寝返りも打てないのに、口は達者だ。退院の翌日ヘルパーさんに来てもらい、どうしても生活できなかったら入院しなさいと助言して帰る。
2日後、知り合いの病院に入院受け入れを頼んでからFさん宅に向かう途中でヘルパーから、訪問したら救急車が来ていた。どうしたらいいですかと電話が来る。到着すると、新しくできた廊下の水たまりを横目に見て、失禁してますね。本人がいないので帰りますと言い消えた。病院取り打ち合わせより早い時間だったので、別の病院に搬送することになった。大きい総合病院は、入院と検査のための家族の同意書が必要だとストレッチャーに乗せたまま待たせている。子供は7人いるが、市内には2人しかいない。1人は精神科に入院中なのでもうひとりの絶縁中の次男に電話するが、取り付く島もない。サインだけでも良いからと、説得を続け来てもらうが母親のいる部屋にも近づかない。
入院してから、ソーシャルワーカーから上履きがない。杖がないと毎日のように電話があってその都度カギを預かってから家に行き届ける。今度の病院は親切だと、おとなしくしていたのに、1週間後の土曜日ソーシャルワーカーから電話がある。知人が迎えに来ていて退院の準備をしている。歩行器移動のレベルだけど、医師も諦めて退院の許可を出した。
まだ歩けないのに退院してやったぜ。ワイルドだろう。
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