2013年7月24日水曜日

ミッキーマウス

Nさんは、古い家の2階で倒れているところを発見された。大家の通報で救急車が来て助かったものの脳梗塞で右半身が麻痺し、胃瘻の生活になった。気管切開の影響と口が麻痺し話が聞き取れない。点滴や血液検査では、医師や看護師が大きな入れ墨に驚く。両手の小指もない。担当の生活保護ケースワーカーは滅多に会いに来ない。野戦病院のようにカーテンで区切られた宅老所で面会すると、母親や弟に会いたいと紙に書くが、記録の上ではとっくに亡くなっている。痰が詰まって、仕方なく入院した。入院のための準備は、なぜかケアマネに任された。以前入院したとき、施設が女性用の下着やパジャマをもってきたのを咎めたから、施設は関わりたくないみたい。その時、私たちは、スポーツ用の靴とミッキーマウスのパジャマを小遣いから買ってもっていった。病気が良くなってきて、本人はしきりと退院したいと言い始めたころ、夕方病院から手術中に亡くなったと電話が来た。生活保護を受けて身寄りのない人の葬儀には慣れていたが、お通夜に行っても住職しかいない。線香の灰が一本残っている。手術を担当した医師が来て、一人で手を合わせていたと聞いた。棺の中の彼は、ミッキーマウスのパジャマを着てはにかんでいるように見えた。

魔法をかけて

あのね。聞いて欲しいことがあるんだけど、と始まる電話を出勤してすぐに受けるとその日1日仕事のつきが無くなってしまう気がする。小児麻痺の姉に対する愚痴が続く。自分が持って行った服をデイで他の人に渡している。無くなった義弟の香典でビールを買って飲んでいる。妹夫婦がアルコール依存症になってどんなに苦労したのか、延々と愚痴か続く。大変だったんだよね。両親は小児麻痺の姉ばかりかまって、妹は放って置かれたのに自分だけが苦労して、今も妹に意地悪されると言いふらされて悔しいのもわかる。今度ようやく養護老人ホームに入ることになったけど、自分は嫌なんだけど妹に迷惑をかけないために我慢しないとねと係の職員に話したのも恥ずかしい。
 聞くしかないんですよね、僕らにできることは。でも、魔法をかけて仲良くなれるのなら良いのにと思いながら、子機のバッテリーが切れるまで我慢。