2014年1月8日水曜日

昔は美人

昔はね、美人で、旅館の仲居ををしていた頃はお客さんからの心付けの方が給金より多かったんだから、というのがSさんの口癖だ。だからどんなに部屋が汚くても、スリッパで上がるヘルパーには目の色を変えて怒る。夏に予告なしで訪問すると、パンツにだぶだぶのシャツだけの格好で出てくる。万年床の枕元には、醤油や調味料を入れすぎてどぶ色になったカップラーメンと痰を拭いたティッシュが散乱している。去年の夏は、トイレに行こうとしてぎっくり腰になったものだから、救急車が着いた時は、床にはおしっこの水たまり、もがいて電話まで移動した跡には便の道ができていた。本人がいないからと部屋をそのままにして帰ったヘルパー事業所はその場でを打ち切って、別のヘルパーと一緒に大掃除した。だから、気を許すようになったのかもしれないが、下着だけで出てきて、昔は美人だった…は無いだろう。新しく作った入れ歯が見つからないから、以前の大きな入れ歯をはめて顔を出すと、おなかの皮を食い破って出てきたエイリアンと見間違ってしまう。
 仲居の仕事が忙しくなって帰りが遅くなったら、旦那が女を作って。悔しかったから私もお客と不倫したのよ。その時生まれたのが精神科に入院している○○子。
 新年一番の電話は、換気扇が動かなくなったから修理に来て……。ケアマネの仕事じゃないんですが。

2013年11月12日火曜日

母親

kさんはまだ43歳。20歳の看護学生の長女から下は小学校5年生まで4人の子供がいる。脳梗塞になって、アルコール中毒の妄想が出て精神科に入院していた。妄想が消えたので介護保険でリハビリをしたいからと担当することになった。
自宅に帰って半年、昼間も焼酎のパックがテーブルの上にあるようになった。食事も取らず、台所に立つと転倒することが多くなって受診。肝硬変の一歩手前と言われてアル中病棟に入院した。夫は、事業で失敗して自殺。頼りにしていた母親は骨折して手伝いができなくなっている。夫の保険金は底を突き、多額のローンが残っている。半身麻痺は良くならない。中3の息子は学年最下位の成績…現実逃避したい気持ちはよくわかるが、肝硬変になったらもっと困る。
入院してもつまらないから、退院する。子供たちが反対するなら生活費は渡さないと言い出したから医者もあきれかえってしまった。
「あなたは母親として失格だ」という医者の言葉に、「私は母親になりたくなかった」と答える。
アルコール依存症と闘う姿を見せることが、一番母親らしいと思うんだけどね。



2013年11月10日日曜日

ななつ星


水曜日の昼、あの「ななつ星」が町を通過する。線路の脇にあるデイサービスでは、毎週水曜日の午後は線路脇に並んで手を振るのがレクリエーションになった。30㎞で近づく列車からは運転手さんはいつも笑顔で手を振って、汽笛を鳴らしてくれる。感激して涙を流す利用者もいる。
天皇陛下の列車みたいだ。お客さんが手を振ってくれた。来週は旗を作ろうと言いながらデイに帰って行く。
私は、水曜日の12時から14時までは、仕事をさぼって「ななつ星」の追っかけをする。

2013年7月24日水曜日

ミッキーマウス

Nさんは、古い家の2階で倒れているところを発見された。大家の通報で救急車が来て助かったものの脳梗塞で右半身が麻痺し、胃瘻の生活になった。気管切開の影響と口が麻痺し話が聞き取れない。点滴や血液検査では、医師や看護師が大きな入れ墨に驚く。両手の小指もない。担当の生活保護ケースワーカーは滅多に会いに来ない。野戦病院のようにカーテンで区切られた宅老所で面会すると、母親や弟に会いたいと紙に書くが、記録の上ではとっくに亡くなっている。痰が詰まって、仕方なく入院した。入院のための準備は、なぜかケアマネに任された。以前入院したとき、施設が女性用の下着やパジャマをもってきたのを咎めたから、施設は関わりたくないみたい。その時、私たちは、スポーツ用の靴とミッキーマウスのパジャマを小遣いから買ってもっていった。病気が良くなってきて、本人はしきりと退院したいと言い始めたころ、夕方病院から手術中に亡くなったと電話が来た。生活保護を受けて身寄りのない人の葬儀には慣れていたが、お通夜に行っても住職しかいない。線香の灰が一本残っている。手術を担当した医師が来て、一人で手を合わせていたと聞いた。棺の中の彼は、ミッキーマウスのパジャマを着てはにかんでいるように見えた。

魔法をかけて

あのね。聞いて欲しいことがあるんだけど、と始まる電話を出勤してすぐに受けるとその日1日仕事のつきが無くなってしまう気がする。小児麻痺の姉に対する愚痴が続く。自分が持って行った服をデイで他の人に渡している。無くなった義弟の香典でビールを買って飲んでいる。妹夫婦がアルコール依存症になってどんなに苦労したのか、延々と愚痴か続く。大変だったんだよね。両親は小児麻痺の姉ばかりかまって、妹は放って置かれたのに自分だけが苦労して、今も妹に意地悪されると言いふらされて悔しいのもわかる。今度ようやく養護老人ホームに入ることになったけど、自分は嫌なんだけど妹に迷惑をかけないために我慢しないとねと係の職員に話したのも恥ずかしい。
 聞くしかないんですよね、僕らにできることは。でも、魔法をかけて仲良くなれるのなら良いのにと思いながら、子機のバッテリーが切れるまで我慢。

2013年6月8日土曜日

マイブーム

実家から手作りの梅ジャムが届いた。
...が、鬼平犯科帳スペシャルをやっていたから、電話をするのは後回し。
昔 母がよく観ていた頃は どこがそんなに面白いのか理解できなかった。母は 中村吉右衛門扮する鬼平のキャラクターに どっぷりハマっていた。
こんなオッサンの どこがいいのか(-_-) だいたい母とは好みが違う。強いて言えば、必殺仕事人の中条きよし扮する..あれ?なんだっけ、三味線の糸を道具に使う人、なんとか言うあのキャラクターには二人して参ったものだ。
平蔵を堪能してからお礼の電話をかける。
梅ジャム、美味しいでしょう、あれは手間が かかるのよ、と どんだけ大変か 延々と説明する母。うんうん、と ひたすら相づちを打つ私。やっと気が済んだのか、ふと母は、なんで荷物が着いたら すぐ電話して来ないのよ、と言いだした。
鬼平がスペシャルだったからさぁ、と言うと まぁ私も観てたんだけどね、と笑う母。
アナタ、前は鬼平なんか好きじゃなかったのに、やっぱり年取ってきたら あの良さが分かるようになったね、と人がいかにも老けたように言うので、でも 一番好きなのは福山雅治よ、と返事をする。
えー?福山雅治?うわ、アナタ あんなナヨナヨした男がいいの? きゃー、お母さんはあの人嫌いよー。

エーッ!Σ( ̄□ ̄;)この世の中に福山のこと、嫌いな女子なんかいるのかー!!

お母さんはね、だいたい あまり顔が綺麗な男性は好きじゃないの。男はね、顔じゃないわよ、ね?パパ?
と電話口の向こうにいる父に呼び掛けている。 ちょっと失礼やろう( ・∇・)

お母さんはね、渋い人がいいな。

ふーん。渋い人ねぇ?

例えば...綿引勝彦とかさ。いいわね。

渋すぎるやろう!Σ( ̄□ ̄;)

2013年5月24日金曜日

宝くじ、いつ買うか?今でしょ!

つい最近 春が来て、いつのまにやら もう初夏である。今日は半袖のプルオーバーにスカートと言うラフな服装。まぁもともとラフな服しか持っていないけど。
新年度に入って何故か(年だからに決まっているが)身体の節々に異常を感じる。胃潰瘍から始まり、先日は ぎっくり腰もどきになって、腰痛の辛さを初めて体験した。腰痛は利用者の訴えでも特に多い症状だが、自分が経験してからは『わあ、ほんと腰が痛いのは辛いでしょうねー』と慰める台詞に心がこもるようになった。そして 先週からは歯医者に通っている。医療保険証なんて使うことなかったのに...。
久しぶりに会ったドクターに『わぁ、歯石あるじゃん』と言われ、『すみません、お金溜まらないから 歯石溜めちゃった』などと汚ないギャグを言いながら診察台に座る。
衛生士のおねーさん、体格がいいから怖い。『はい、開けて下さい、閉じて下さい』と言われるたび こちらも 『ハイ』と律儀に返事をする。感じよい患者さんだったら 優しくしてくれるかな、などと淡い期待があるのだ。 その心配はなかった。オネーサンは公平な人だった( ̄ー ̄)
そして来週は再び内科に行かねばならない。胃薬がもうないので取りに行かねば。机の中には 他者から回ってきたロキソニンやアリナミンやレンドルミンが何故かあるのだが、タケプロンはない。あーまた病院かぁ。もう痛くないし、要らないんじゃないのん?と思うが、ドクターには2か月間飲むように言われている。私が面倒臭がるので、夕食後は 家族に『飲みなさい』と手渡しされて飲み込むまでを監視されている。アセスメント表なら服薬に関して一部介助にチェックが入るところだ。
今年は数年に一度の当たり年の巳年だから、年女の私には特に恩恵があるから 私と仲良くしてたら恩恵のおこぼれがあるらしいよ、と豪語していた罰が当たったのかもしれない。