2009年4月20日月曜日

余裕

今年100歳になる男性。取り立てて問題行動はないが認知症がある。というより、数分前のことは覚えていない。リビングで新聞を読んでいるが、次の行を読み終える頃にはその前の行に何が書いてあったか覚えていないので、何時間経っても新聞を読み終えることはなく、そのうち船をこぎ始める。
問題と言えば、暇になるとトイレに行って1時間近く居座ることと、だれもいないとコードをコンセントから抜いてしまうことぐらい。といっても家族にとってはストレスなのだが。
ショートステイでは、トイレに行った帰り、職員を捕まえて「わしは何でここにいるのだ。家に帰してくれ」とつきまとう。施設のフロアーには40人の利用者がいて、一人の職員で夜介護する。だからつきまとわれると仕事にならなくなってしまう。しかし、家に帰りたいというのは自然の感情だから、家に帰りたいというのは異常な行動ではない。
認知症の人に対し良い介護を行うことは難しくない。介護者が穏やかに寄り添うことなのだ。不安を抱えて、自分がどうしたら良いか分からない人に、さりげなく手助けすること。訴えに耳を傾けること。多少の技術は必要かもしれない。しかし、素人の家族が介護しても穏やかな生活を送っている例を見るに付け、認知症の人の介護で一番大切なのは、介護者の穏やかな態度だと思う。どんなに知識があって技術がある職員でも、穏やかな精神状態で40人を介護することはできない。
この国は、介護にお金を掛けようとしない。だから、職員や家族は余裕を持つことができないのだ。

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